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大阪地方裁判所 平成2年(行ウ)19号 判決 1993年5月11日

大阪市住吉区杉本一丁目五番七号

原告

藤本信夫

右訴訟代理人弁護士

大槻龍馬

谷村和治

平田友三

浅野芳朗

大阪市住吉区住吉二丁目一七番三七号

被告

住吉税務署長 宮崎一也

右指定代理人

手﨑政人

青山龍二

中井保弘

浅田洽爾

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

被告が、昭和四六年四月一五日付けでなした、

一  原告の昭和四二年分の所得税の更正のうち総所得金額二三七万八〇〇〇円を超える部分及びこれに伴う重加算税の賦課決定

二  原告の昭和四三年分の所得税の更正のうち総所得金額三三二万三〇〇〇円を超える部分及びこれに伴う重加算税の賦課決定

三  原告の昭和四四年分の所得税の更正のうち総所得金額四五四万円を超える部分及びこれに伴う重加算税の賦課決定

をいずれも取り消す。

第二事案の概要

一  争いのない事実

1  昭和四二年分ないし昭和四四年分(以下「本件係争年分」という。)の各所得税について、原告は決定申告処期限までに、当時原告の国税の納税地を所轄していた阿倍野税務署長に別表一各確定申告欄記載のとおり確定申告をなし、これに対し、同税務署長は、昭和四六年四月一五日付けで、別表一各更正・賦課決定欄記載のとおりの更正及び重加算税の賦課決定(以下「本件各処分」という。)をなした。

2  本件各処分に対する不服申立ての経緯は別表二記載のとおりである。

3  なお、原告の国税の納税地を所轄する税務署長は、昭和六〇年八月七日、被告に変更された。

二  当事者の主張

1  被告

原告の本件係争各年分の所得金額は、次のとおりであり、本件各処分の認定どおりであるから、本件各処分はいずれも適法である。

なお、本件係争各年分の事業所得の金額については、いずれも財産増減法によって計算されたものである。

(一) 昭和四二年分の総所得金額は六四八四万五一三九円であり、その内訳は次のとおりである。

(1) 事業所得の金額 六二三一〇五八八九円

原告の昭和四二年一二月三一日現在の純資産(総資産の額から総負債の額を控除した残余の額をいう。)の額から同年一月一日現在の純資産の額を控除して算定した。

<1> 昭和四二年一二月三一日現在の純資産の額 三億〇五九五万一四〇六円

<2> 同年一月一日現在の純資産の額 二億四三六四万〇八一八円

<1>-<2>= 六二三一万〇五八八円

(明細は別表三、四記載のとおり)

(2) 配当所得の金額 一五万九九四一円

近畿日本鉄道株式会社及び株式会社新潟鉄工所の各株式に係る配当の金額である。

(3) 不動産所得の金額 四万四六一〇円

大阪市阿倍野区阪南町六丁目所在の家屋の賃貸に係る所得金額である。

(4) 給与所得の金額 二三二万円

株式会社フジ医療器(以下「(株)フジ医療器」という。)から支払いを受けた給与に係る所得金額である。

(二) 昭和四三年分の総所得金額は一億五八四七万二四七六円であり、その内訳は次のとおりである。

(1) 事業所得の金額 一億五四九七万四七五一円

計算方法は、昭和四二年分と同じ。

<1> 昭和四三年一二月三一日現在の純資産の額 四億六五九六万八六六八円

<2> 同年一月一日現在の純資産の額 三億一〇九九万三九一七円

<1>-<2>= 一億五四九七万四七五一円

(明細は別表三、四記載のとおり)

(2) 配当所得の金額 一七万八一〇五円

近畿日本鉄道株式会社及び株式会社新潟鉄工所の各株式に係る配当の金額である。

(3) 不動産所得の金額 四万四六二〇円

前記阪南町六丁目所在の家屋の賃貸に係る所得金額である。

(4) 給与所得の金額 三二七万五〇〇〇円

(株)フジ医療器から支払いを受けた給与に係る所得金額である。

(三) 昭和四四年分の総所得金額は三億〇七八三万二〇七六円であり、その内訳は次のとおりである。

(1) 事業所得の金額 三億〇三四八万四七二二円

計算方法は、昭和四二年分と同じ。

<1> 昭和四四年一二月三一地現在の純資産の額 七億七三一〇万八六〇〇円

<2> 同年一月一日現在の純資産の額 四億六九六二万三八七八円

<1>-<2>= 三億〇三四八万四七二二円

(明細は別表三、四記載のとおり)

(2) 配当所得の金額 一三万四五九四円

株式会社新潟鉄工所及び日本航空株式会社の各株式に係る配当の金額である。

(3) 不動産所得の金額 四万四六二〇円

前記阪南町六丁目所在の家屋の賃貸に係る所得金額である。

(4) 給与所得の金額 四四九万二〇〇〇円

(株)フジ医療器から支払いを受けた給与に係る所得金額である。

(5) 譲渡所得の金額 △三二万三八六〇円

(△は損失を示す。別表三についても同じ。)

昭和四一年四月に一三〇万円で取得した自動車を同四四年一一月に二六万四〇〇〇円で譲渡したことによるものである。

2  原告

被告主張の原告の本件係争年分の所得金額のうち、配当所得、不動産所得、給与所得及び譲渡所得については認めるが、事業所得については、以下のとおり否認する。

(一) 被告主張の事業所得は、原告に帰属するものではない。

すなわち、原告は当初家内工業的に、マッサージ器の製造・販売をしてきたものであるが、昭和三六年に右事業を長男の訴外藤本信一郎(以下「信一郎」という。)に引継ぎ、信一郎は「フジ製作所」の名称で、同事業を継承し、同年以降の同事業にかかる税務申告は信一郎がしてきた。

その後、信一郎は(株)フジ医療器を設立し、(株)フジ製作所が右マッサージ器の製造・販売事業をするようになった。ただ、経理面では、同法人の将来に備え、フジ政策諸で商品を製造し、(株)フジ医療器がこれを仕入れて販売する形の仮装の経理処理をしたが、これは、同法人の利益を最小限にとどめ、資産の貯留を図ったためで、右事業の主体は、製造も含めて、あくまでも同法人であり、右貯留資産は、同法人の簿外資産である。

仮に、右資産が同法人の簿外資産でないとしても、それは信一郎の事業所得であり、いずれにしても、原告の事業所得ではない。

(二) 被告主張の別表三、四記載の資産及び負債の原告への帰属及び金額についての認否は、別表三認否欄記載のとおりである。

三  本件の争点

1  フジ製作所のマッサージ器の製造による事業所得は原告に帰属するか。

2(一)  別表三、四記載の資産及び負債のうち、現金、定期預金(大阪銀行西田辺支店の三〇万円及び西成郵便局の定期預金一五〇万円を除く。)、普通預金(三井銀行西田辺支店の原告名義のものを除く。)、受取手形、売掛金、有価証券のうち日本航空株式会社の株式(以下「日本航空株」という。)一〇〇〇株、棚卸商品、前渡金、立替金、貸付金、未収入金、建物付属設備、構築物のうち自宅の塀を除いた物、機械、車両、器具備品、債権、保証金、出資金のうち東京(株)フジ医療器(吉岡美恵、山崎田鶴名義分)の株式、店主貸(ただし、吉岡美恵に贈与した配当金、原告の所得税、市民税、固定資産税、生活費、家庭用器具購入費、株式取得手数料(日本航空株を除く。)の帰属自体は争いがない。)、仮受金、買掛金、未払金及び店主借(ただし、定期預金利息のうち大阪銀行西田辺支店の三〇万円分の利息、積立預金の利息、株式配当(日本航空株除く)、阪南町の家賃収入、東京(株)フジ医療器及び大阪(株)フジ医療器からの給与の帰属自体は争いがない。)は原告に帰属するか。

(二)  別表三記載の資産及び負債のうち、現金、売掛金、棚卸商品、前渡金、立替金、店主貸、仮受金、買掛金、未払金及び店主借の金額如何。

第三争点に対する判断

一  フジ製作所のマッサージ器の製造による事業所得は原告に帰属するか。

1  甲第八ないし第一五号証、第二九号証、第三四、第三五号証、第三五号証の一ないし六、第三六ないし第三九号証、第四四、第四五号証、第四九号証、第五四ないし第七三号証、乙第三ないし第三〇号証、第三四号証、第三九号証、第四二、第四三号証、第五三ないし第五八号証、証人吉岡耕三の証言によれば、次の事実が認められる。

(一) 原告は、昭和二九年ころ以降、中央医療器からマッサージ機(あんま機)を仕入れて風呂屋へ販売していたが、これが今後有望な商品であると考え、右販売の傍ら、原告自身マッサージ機の製造方法につき研究をしていたところ、同三三年ころ、右中央医療器から製品の販売を拒否されたことから、大阪市阿倍野区阪南町中六丁目八番地(後に「大阪市阿倍野区阪南町六丁目一一番一号」と住居表示が変更された。以下単に「阪南町六丁目」という。)所在の自宅一階を工場にしてマッサージ機の製造を開始し、出来上がった製品を旅館などに持ち込んで販売するようになった。

そして、原告(明治三八年一月生まれ)は、昭和三五年ころ、大阪服地株式会社を退職した、当時二二歳の長男信一郎にも右マッサージ機製造販売業を手伝わせることにした。しかし、マッサージ機の製造は専ら原告が行い、信一郎は、製造面にほとんど関与せず、マッサージ機の販路拡張のため全国を廻るなどして主としてその販売面で原告の事業を補佐するのみであった。

その後、原告の考案工夫によりマッサージ機の製品の改良が進み、また、信一郎が販路を拡張したこともあって、右事業は業績が拡大し、同三八年末には大阪市住吉区杉本町二丁目七三番地(後に「大阪市住吉区杉本一丁目五番七号」と住居表示が変更された。以下単に「杉本一丁目」という。)に自宅及び工場事務所を新築し、同所においてマッサージ機の製造販売業を行うようになったが、昭和四四、五年当時の生産台数は月四、五〇〇〇台にも上っていた。ちなみに、右マッサージ機は、当時、営業用が一台七万円ぐらい、家庭用が一台六万円弱ぐらいの値段で小売されていたものである。

(二) 原告は、昭和四〇年四月一三日、本店所在地を阪南町六丁目として(株)ブジ医療器を設立し、右事業の販売部門を切り離して法人化させ、個人経営の製造部門(以下「フジ製作所」という。)で製造したマッサージ機を(株)フジ医療器が仕入れて販売するという事業形態をとるようになった。

右(株)フジ医療器は設立時の資本金は一〇〇〇万円、定款に記載されたその事業目的は「一、医療器の販売、二、浴場用衛生材料等の販売、三、前号に附帯する一切の業務」であり、原告が代表取締役となり、信一郎が取締役(専務)、同人の妻藤本治子(以下「治子」という。)、原告の長女吉岡美恵(以下「美恵」という。)、同二女山崎田鶴がそれぞれ取締役、原告の妻藤本幸子(以下「幸子」という。)が監査役という構成からなる同族会社であった。

原告が(株)フジ医療器を設立した目的は、百貨店等の大手取引先を獲得するため、対外的信用を築こうとしたためであったが、その際、製造部門を法人化せずに個人事業のまま残したのは、製造部門をも法人化すれば販売部門のみを法人組織にする場合と異なり、製造設備等のために莫大な資本金が必要となり、原告がそれまでマッサージ機の製造販売によって蓄積してきた裏の資金を公表しなければならなくなることと、法人化すれば諸帳簿を備えつけて記帳しなければならず、そうなると原告の実際の所得が税務署に把握され課税されることとなるが、製造部門を個人事業のままにしておけば、従来どおり帳簿類を備え付けないで製造販売を通じて得た利益を両部門で適当に調整・按配し、これを原告個人に留保し、秘匿することができるという、主として税金対策上の見地からであった。

(三) 原告は、マッサージ機の製造販売業を始めて以来、その事業所得についての税金の確定申告をしたことはなく、昭和三五年分以降、フジ製作所の事業所得の確定申告は信一郎名義でなされ、右会社設立後も、マッサージ器の販売に係る所得については(株)フジ医療器が法人税の申告をし、フジ製作所の事業所得については引き続き信一郎名義で所得税の確定申告がなされていた。

また、右マッサージ機製造事業についての医療用具製造業許可や電気用品製造登録、右マッサージ機についての同法一八条の電気用品の型式認可、実用新案登録等も、いずれも信一郎名義でなされていた。(四)ところで、前記のとおり(株)フジ医療器の本店と定められた阪南町六丁目には、昭和四一年九月ころから、美恵一家が居住し、同所では美恵が同社の経理関係の帳簿類を作成するのみであり、右設立後も、事業の本拠地は杉本一丁目から変わらず、マッサージ機の製造は、すべて杉本一丁目の工場で行われており、販売も、同所の事務所のほか、名古屋、京都、福岡等数か所に(株)フジ医療器の営業所が置かれ、また、東京には別会社が設立されるに至ったが、杉本一丁目の事務所でこれらを統括していた。

そして、右杉本一丁目の工場には三〇人位の工員がおり、同事務所には九人の事務担当者と八人の販売担当者がいたが、製品の研究、改良、原材料や部品の仕入、工場の設備、工員の配置、製造管理等、マッサージ機の製造に関する決定や指示は原告が行っており、また、販売業務に関しても、製品の販売政策や販売価格の決定等の重要事項は、原告が決定し、あるいはその了解の下に遂行されていた。

他方、信一郎は、前記のとおり原告の事業を手伝うようになって以来、(株)フジ医療器設立の前後を通じて、一貫して、専ら製品の販売面を相当しており、製造部門にはほとんど関与しておらず、これに関する決定や指示を行うこともなく、販売部門においても、原告に意見を述べることはあったが、重要事項については、原告の最終的な決定に従っていた。

(五) 前記のとおり、フジ製作所で製造されたマッサージ機は、すべて(株)フジ医療器が仕入れて販売するという事業形態がとられていたのであるが、(株)フジ医療器が他へマッサージ機を販売した代金として受領した現金や手形、小切手は、すべての原告の自宅に届けられたうえ、(株)フジ医療器分、フジ製作所分を区別しないで混然一体としたまま、原告又は原告の意を受けた幸子が管理し、現金の一部を自宅で保管するほかは、適宜(株)フジ医療器名義の当座預金や信一郎名義の普通預金として預けていた。そして、これらの現金・預金から、製造販売両部門の役員、従業員らに対する給料、(株)フジ医療器の諸経費、フジ製作所の原材料や部品の仕入代金などの支払いがなされ、残りの現金や預金は、原告の自宅で保管する以外は、原告の指示、了解のもとに、幸子や信一郎が仮名の定期預金等をし、あるいは、原告が自己の名義や一部は他人名義で不動産や有価証券を購入し、自己の資産として留保していた。

(六) しかも、右仕入れについては、フジ製作所から納品書、請求書、領収書等が作成交付されることはなく、また(株)フジ医療器においても仕入帳が作成されることはなく、右仕入値(フジ製作所から(株)フジ医療器への売り値)は、(株)フジ医療器の決算時にまず原告が(株)フジ医療器の申告所得額を前年度のそれを多少上回る程度の金額になるように決め、次に原告から決算書類や確定申告書等の作成を任されている美恵・吉岡耕三夫婦が帳簿上も右申告所得金額と合致するように仕入値を適宜操作してこれを決定する方法が採られていた。

なお、右帳簿上の仕入代金は、(株)フジ医療器が、「フジ製作所」宛の約束手形及び小切手を振り出して決済された形にしていた。

(七) 他方、マッサージ機の製造に必要な原材料や部品の仕入先の業者らは、おおむね右製造業が原告の個人事業であるとの認識を有しており、右業者らが作成する納品書、請求書、領収書等の宛名の大部分は原告が個人事業の屋号としている「フジ製作所」名が使用されており、また、「フジ医療器」「フジ医療器製作所」「藤本」などの名称が使用されたこともあったが、(株)フジ医療器の会社名が記載されることはほとんどなかった。そして時に仕入先の業者が納品書等に(株)フジ医療器と会社名を記載してきた時には、原告の指示で「フジ製作所」宛に書き直させることもあった。

なお、杉本一丁目のマッサージ機製造工場の入口には「フジ医療機器製作所」と記載した表札が掛けられており、その工場の壁面にも右屋号が大書して表示されていた。

2  以上のとおり、(株)フジ医療器は、もともと原告が個人として行っていたマッサージ機製造販売事業の販売部門を税務対策上法人化したものであるが、法人化した後も、原告がフジ製作所と(株)フジ医療器の両事業にわたり実権を有し、経理面でも、個人と会社は混然一体となっており、ただ、税金申告のために、(株)フジ医療器はフジ製作所からのマッサージ機の仕入れを帳簿上に作出するのみであって、原告の個人事業たる経営実態は変わっていない。

ところで、原告は、右事業の主体は製造部門も含めて、(株)フジ医療器であると主張する。

しかしながら、右のとおり、右事業は、販売部門をも含めて原告が個人で営む一個の事業とみるのが実態に最も即するものであり、ただ、(株)フジ医療器はマッサージ機等の販売を目的とする会社として設立登記がされ、その名で販売事業を行っており、他方、製造部門の取引業者は、原告個人を取引相手として取引を行っており、右製造事業と販売事業は、この面から一応区別することもできることからすれば、右会社の事業目的であるマッサージ機販売については(株)フジ医療器の事業とし、これを除いたマッサージ機の製造部門は原告の個人営業とみるのが相当というべきであって、右原告の主張は採用できない。

また、原告は、仮に、右資産が同法人の簿外資産でないとしても、それは信一郎の事業所得であり、いずれにしても、原告の事業所得ではないと主張する。

なるほど、前記のとおり、フジ製作所の事業所得の確定申告や、実用新案、医療用具製造許可、電気用品製造登録はいずれも信一郎名義でなされている。

しかしながら、前記認定の信一郎が原告のマッサージ機製造販売業に関与するに至った事情や、当時の両者の年齢、(株)フジ医療器設立後のマッサージ機製造における両者の役割、売上金の管理や収益の保有状態、さらに前掲証拠によれば、右実用新案等の申請を信一郎名義でしたのは、原告方で製造された製品が他人の特許権等を侵害し損害賠償請求権を受けるような事態になった場合のことを考慮し、特に財産を所有していない信一郎名義にしておく方が原告一家の財産保全のためには都合がよいと考えたためであることも認められるのであって、これらに照らせば信一郎は未だ原告を補佐する地位にあるにとどまり、販売、製造全般の経営者は原告であって、フジ製作所から生ずる事業所得は、原告に帰属するものと認められる。

二  別表三、四記載の資産及び負債のうち、原告が帰属又は金額を争うものについての原告への帰属又は金額如何。

1  現金、定期預金、普通預金、有価証券、棚卸商品、前渡金、立替金、貸付金、未収入金、建物付属設備、構築物、機械、車両、器具備品、債券、保証金、出資金及び店主貸の各資産並びに仮受金、買掛金、未払金及び店主借の各負債について

(一) 前記のとおり、(株)フジ医療器とフジ製作所の事業は実質的には原告が個人で営む一個の事業と認められるものであり、しかも、原告が(株)フジ医療器のフジ製作所からのマッサージ機の仕入価格を帳簿上操作することによって両者間の所得額の調整を行い、その収益は、(株)フジ医療器分とフジ製作所分が混然一体となったまま、原告宅に届けられ、(株)フジ医療器及びフジ製作所の預金として預け入れられ、また、必要経費が支払われた後、現金や仮名の定期預金という形で貯蓄されたものであり、このように会社と個人の営業、資産、経理等を截然と区別することができない場合は、会社が決算書類等公表上確定した所得並びにそれ以外に証拠上明らかに会社に帰属するものと認められる所得を除いたその余の所得は、すべて個人に帰属するものと認められるのが相当である。

(二) 乙第三一号証、第三九ないし第四一号証によれば、右のようにして原告宅に保有されていた現金は別表四一記載のとおりであることが認められる。

(三) 甲第八、第一〇号証、乙第一九、第二一、第二五、第三一ないし第三三号証、第四二ないし第四四号証、第六七ないし第七〇号証によれば、別表四3記載の定期預金(大阪銀行西田辺支店の三〇万円及び西成郵便局の定期預金一五〇万円を除く。)及び同5記載の普通預金(三井銀行西田辺支店の原告名義のものを除く。)は、いずれも右のようにして(株)フジ医療器が他に販売したマッサージ機の代金の中から蓄積された預金であることが認められる(なお、以上の各定期預金及び普通預金の額については、いずれも争いがない。)。

(四) 乙第八号証、第一九号証、第二五号証、第二九号証、第三一号証、第四四ないし第五二号証、第六五ないし、第六七号証、第七一ないし第七三号証、弁論の全趣旨によれば、別表四8記載の評価証券のうち日本航空株一〇〇〇株、同9記載の棚卸商品、同10記載の前渡金、同11記載の立替金、同12記載の貸付金、同13記載の未収入金、同15記載の建物付属設備、同16記載の構築物(自宅の塀を除く。)、同17記載の機械、同18記載の車両、同19記載の器具備品、同21記載の債権、同22記載の保証金、同23記載の出資金のうち東京(株)フジ医療器(吉岡美恵、山崎田鶴名義分)及び大阪(株)フジ医療器(吉岡美恵、山崎田鶴名義分)の出資金、同24記載の店主貸のうち信一郎に払った簿外給与四六〇万円の二分の一、治子に払った簿外給与七六万円の二分の1、株式取得手数料(日本航空株式会社株式取得手数料分)及び車両売却損の各資産並びに同25記載の仮受金、同26記載の買掛金、同27記載の未払金及び同28記載の店主借のうちの普通預金利息、定期預金利息(大阪銀行西田辺支店の三〇万円の定期預金利息を除く。)、株式配当金(日本航空株式会社株式分)、藤本幸子及び藤本信一郎の各欠損・利益の振替調整分の各負債が存在したことが認められる(なお、右有価証券貸付金、未収入金、建物付近属設、構築物、機械、車両、器具備品、債券、保証金及び出資金の額については、いずれも争いがない。)。

なお、乙第三五ないし第三八号証によれば、以上の各資産及び負債は、(株)フジ医療器の法人税確定申告書添付の決算書には計上されていないことが認められる。

2  受取手形及び売掛金について

前記のとおり、(株)フジ医療器とフジ製作所の事業に実質的には原告が個人で営む一個の事業といえるが、販売部門については(株)フジ医療器の事業として、これを除いたマッサージ機の製造部門は原告の個人事業とみるのが相当である以上、右原告の事業所得を算定する上においては、(株)フジ医療器の販売するマッサージ機は、フジ製作所から仕入れたものとして、これによる原告の収入を資産に計上すべきことになる。

そして、このようにして生じた資産として、乙第九号証、第三一号証、第三四、三五号証、第四四、四五号証、第五九ないし第六四号証によれば、原告は、別表四6記載のとおりの受取手形(額については争いがない。)及び同7記載のとおりの売掛金を有したことが認められる。

(裁判長裁判官 福富昌昭 裁判官 川添利賢 裁判官大藪和男は転補につき署名捺印することができない。裁判長裁判官 福富昌昭)

別表一

確定申告及び更正・賦課決定処分の内容一覧表

<省略>

別表二

本件課税処分等の経緯表

<省略>

別表三

事業所得の金額計算書(資産負債増減表)

<省略>

<省略>

別表四

資産負債等の明細

1 現金

<省略>

2 当座預金の内訳

<省略>

3 定期預金の内訳

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

4 積立預金の内訳

<省略>

5 普通預金の内訳

<省略>

6 受取手形

<省略>

<省略>

7 売掛金

<省略>

8 有価証券

<省略>

9 棚卸商品

<省略>

10 前渡金

<省略>

11 立替金

<省略>

12 貸付金

<省略>

13 未収入金

<省略>

14 建物

<省略>

15 建物付属設備

<省略>

16 構築物

<省略>

17 機械

<省略>

18 車両

<省略>

19 器具備品

<省略>

20 土地

<省略>

21 債券

<省略>

22 保証金

<省略>

23 出資金

<省略>

24 店主貸(事業所得の計算上、必要経費とならない生活費等の支出金)

<省略>

25 仮受金

<省略>

26 買掛金

<省略>

27 未払金

<省略>

28 店主借(事業所得の計算上、所得に算入されない預金利息等の収入金)

<省略>

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